この記事で分かること
福井の中小企業が事務作業を効率化しようとするとき、どこを見ればよいかを整理する。
AIやツールの話は後半にしか出てこない。順番として、そこは後だからだ。
効率化が進まない会社に共通していること
事務作業を減らしたいという相談は多い。
ただ、話を聞いていくと、どの作業にどれだけ時間がかかっているかを誰も把握していないことがよくある。
これは怠慢ではない。
社長も現場に出ている会社では、事務所で何が起きているかは見えない。事務の担当者も、自分の作業時間を測ってはいない。
把握していない状態で「効率化しましょう」と言われても、どこから手をつけるかが決まらない。
だから話がツール選びに逆戻りする。そして止まる。
最初に見る場所は、ツールの比較表ではなく、自社の一日である。
見るべきなのは「繰り返しているもの」
一日の作業を書き出すと、同じ形のものが並ぶ。
- 同じ書式に、毎回違う数字を入れている(見積書、請求書、報告書)
- 一度書いたものを、別の場所に打ち直している(手書きメモ、日報、Excel転記)
- 同じ質問に、毎回似た答えを返している(電話、メール、LINEの問い合わせ)
- どこにあるか探している(過去の資料、単価表、取引先の履歴)
福井の中小企業で見かける事務の形は、だいたいこの4つに収まる。
そしてこの4つは、いずれも効率化しやすい。手順が決まっていて、判断がほとんど要らないからだ。
逆に、毎回考えて決めている作業は後回しでよい。そこは人が続けたほうが速い。
効率化しやすい作業の3条件
手をつける作業を選ぶときの条件を挙げる。
1. 毎月発生している — 年に一度の作業を効率化しても、効果が出るのは来年になる
2. 手順が決まっている — 手順が人によって違う作業は、先に手順を揃えるほうが先
3. 間違えても取り返しがつく — 送信前に人が確認できる作業から始める
3つとも揃っている作業から始めると、効果が数週間で見える。
1つでも欠けていると、労力の割に変化が分かりにくい。
手をつけないほうがよい作業
効率化の相談で、あえて止めることもある。
- 月に数回しか発生しない作業 — 仕組みを作る手間のほうが大きい
- 判断が主で、作業が従の仕事 — 見積の金額を決める、断りの連絡を入れる、といったもの
- 一人しか手順を知らない作業 — 先に手順を書き出すのが順番として先になる
「全部AI化できます」と言う相手には、判断の基準がない。
減らす作業を選ぶことは、減らさない作業を決めることでもある。
誰が使うかを先に決める
作った仕組みを毎日触る人を、着手前に決めておく。
決めずに作ると、詳しい一人だけが使う状態になる。
その人が休んだ日には元の手順に戻り、しばらくすると誰も使わなくなる。
事務作業の効率化で失敗するときの原因は、たいていツールではない。
使う人が決まっていないことである。
ここまでできてから、道具の話になる
対象の作業と使う人が決まっていれば、道具の選定は難しくない。
Excelの整理で済む場合もあるし、既存のサービスで足りる場合もある。AIを使ったほうが早い場合もある。
順番が逆になると、道具に合わせて作業のほうを変えることになる。
そうすると現場の負担が増えて、結局使われない。
AIに向く作業と向かない作業の線引きは「AIに任せてはいけない仕事」で整理している。
見積書づくりについては「見積書が遅くなる理由と、AIで自動化できる範囲」に書いた。
当社が自社の事務作業をどこまで自動化したか
一般論だけでは判断しにくいので、当社が自社の事務でやったことを書く。従業員を増やさずに回すために、事務作業を先に片付ける必要があった。
領収書の記帳
以前は、レシートを溜めて、月末にまとめて表へ打ち込んでいた。今はスマートフォンで写真を撮るだけで、店名、日付、金額、消費税の内訳、税率区分が読み取られ、そのまま帳簿へ入る。
この方法で記帳した領収書は、これまでに104件になった。ガソリン、飲食、工具、高速道路の通行料。金額の小さいものほど後回しになりやすく、溜まると手がつけられなくなる作業だった。
ここで効いているのは読み取りの精度そのものより、「溜めなくてよくなったこと」である。1件あたりの入力時間が短縮されたのではなく、月末にまとめて数時間かける作業自体が消えた。
請求書の発行
毎月1日に、継続契約分の請求書が自動で作られ、そのまま送付される。番号の採番、金額の計算、PDFの作成、送付までが一続きになっている。これまでに21通を発行した。
元の作業は、前月分を見ながら日付と番号を書き換え、金額を確認し、PDFにして、メールに添付する、というものだった。1通あたりは10分程度でも、請求漏れと番号の重複という失敗が起きうる作業だった。
うまくいかなかったこと
成功例だけ書くと判断を誤るので、失敗も書く。
営業メールの返信を検知して知らせる仕組みを作ったが、検知が壊れていることに約7週間気づかず、その間に届いた4件の返信を取りこぼした。自動返信を本物の返信として数える不具合もあり、記録に残している。
ここから分かるのは、自動化すると失敗が見えなくなるということである。人がやっていれば「今週は返信が1件もないな」と気づく。仕組みに任せると、動いていないのか、本当に何も来ていないのかが区別できない。
だから当社は、社外へ提案するときも「止まったことに誰がいつ気づくか」を先に決める。事務作業の効率化で最後に効いてくるのは、速さより、壊れたときに分かる作りかどうかである。
相談先について
福井県内には、無料で相談できる公的な窓口がある。
まず何から考えればよいかを整理したいだけなら、そちらのほうが早い場合もある。詳しくは「福井市の中小企業がAI導入で最初につまずくところ」に書いた。
当社は福井市に本店を置いており、福井県内であれば現場訪問が無料である。
一日の作業を一緒に洗い出すところから始めている。効率化しないほうがよい作業は、そのように伝える。
まだ全体像から整理したい場合は「福井の中小企業がAI導入で最初に考える3つ」、生成AIそのものの使い方を先に決めたい場合は「福井の中小企業が生成AIを入れる前に決める4つ」に書いた。
福井県内でのAI導入の進め方、無料訪問でうかがう地域、実際の導入事例は「福井でAI導入・業務自動化を相談するなら」にまとめている。
まとめ
事務作業の効率化で最初に見るのは、ツールではなく自社の一日である。
繰り返している作業を書き出し、毎月発生し、手順が決まっていて、間違えても取り返しがつくものから選ぶ。
使う人を先に決める。ここを飛ばすと、作ったものが使われない。
道具の話は、その後でよい。
自社のどの業務からAI化できるか、無料で確認できます
福井県内は現場訪問無料、全国はオンラインで相談可能です。まずは30秒のAI診断か、無料の実務キットからどうぞ。