建設業の最初のAI化——現場から離れられない会社の場合
建設業でAI導入を考えるときに最初に手をつける業務を、現場を離れられない事情を前提に整理する。向く業務と向かない業務の線引きも解説する。
この記事で分かること
建設業でAIの話をすると、たいてい同じ反応が返ってくる。「現場は人がやるしかない」。
その通りだ。足場を組むのも、図面を見て判断するのも、人の仕事である。
本記事では、現場作業を置き換える話ではなく、現場の前後にある事務作業のうち、どこから手をつけると効くのかを整理する。
建設業でAIが向かない仕事
先に、向かないものをはっきりさせておく。
- 現場での施工・作業そのもの
- 図面を見て構造や安全性を判断すること
- 現場の状況を見て段取りを組み替える判断
- 職人や協力会社との関係を踏まえた調整
これらは経験と現場感覚の領域で、AIに任せるべきではない。
「AIで現場が楽になる」という話をされたら、まず何を指しているのかを確認したほうがよい。
それでも、事務作業に時間を取られている
一方で、建設業の会社を訪ねると、社長や現場監督が夜や休日に事務作業をしている光景をよく見る。
- 見積書の作成(過去の似た案件を探して、単価を確認して、転記する)
- 工事写真の整理と報告書への貼り付け
- 日報の取りまとめ
- 元請けや役所へ提出する書類の作成
- 協力会社への発注書・請求処理
これらは現場作業ではないが、現場をやりながら片付けている。だから夜になる。
ここが、AIで時間を取り戻せる領域だ。
最初に手をつけるなら、見積書
複数の候補がある中で、最初の一つを選ぶなら見積書の作成を勧める。理由は三つある。
理由1:発生頻度が高い
見積依頼は継続的に来る。月に何件も作っていれば、一件あたりの短縮がそのまま積み上がる。
年に一度の作業を自動化しても、効果は年に一度しか出ない。頻度が効果を決める。
理由2:過去の蓄積が使える
見積書は、過去に似た案件の書類が残っている。単価表もある。
つまり参照する材料が社内にある状態なので、ゼロから何かを作る必要がない。
理由3:判断と作業が分けやすい
見積書づくりは、実は二つの作業が混ざっている。
- 転記・計算:過去の書式に沿って項目を入れ、単価をかけて合計する
- 判断:この客先にこの金額を出すか、この工期でいけるか
前者は手順が決まっているので任せられる。後者は人が決める。
この二つを分けられるので、「どこまで任せるか」の線引きがしやすい。
写真整理も候補になる
見積書の次に効きやすいのは、工事写真の整理だ。
現場でスマートフォンで撮った写真が数百枚あり、それを工程別・箇所別に分けて報告書に貼る。
この作業は判断がほとんど不要な割に、時間だけがかかる。
ただし、写真の整理は「どの写真がどの工程か」を機械が判断する必要があるため、
見積書より仕組みづくりの手間がかかる。まず見積書で効果を確認してから検討するのが順番として無理がない。
建設業で気をつけたい点
現場にいる人が使える形にする
事務所のパソコンでしか動かない仕組みは、現場にいる人には使えない。
建設業の場合、スマートフォンから使えるかどうかが定着を大きく左右する。
LINEのように普段使っているアプリから操作できる形にすると、新しく覚えることが減る。
元請けの書式に合わせる必要がある
提出書類は元請けごとに書式が違うことが多い。
「一つの書式で全部いける」という前提で作ると、結局手直しが発生する。
どの書式が何割を占めているかを先に把握しておくと、対象を絞れる。
単価は人が最終確認する
積算の金額は、間違えたときの影響が大きい。
計算そのものは任せても、最終確認は人が行う形にしておくべきだ。
このあたりの線引きは「AIに任せてはいけない仕事」でも整理している。
始める前に確認しておくこと
- 見積書は月に何件くらい作っているか
- 一件あたり、おおよそ何時間かかっているか
- 単価表・過去の見積書は、探せる状態で保管されているか
- 提出先の書式は何種類あるか
この四つが分かれば、効果が見込める範囲と、そうでない範囲が判断できる。
特に一つ目と二つ目は、費用の妥当性を考えるときの基準になる(考え方は「AIに月いくらまで払っていいか」を参照)。
SHIKAKERUの場合
弊社は建設・設備関係の会社からの相談を受けており、現場を見せていただいたうえで対象業務を決めている。
福井県・北陸地方は現場視察を無料で行っており、実際の書類や作業の流れを確認したうえで提案している。
現場作業を置き換える提案はしない。現場の前後にある事務作業のうち、繰り返し発生していて手順が決まっているものから手をつける。
それが結果として、夜や休日に事務所へ戻る時間を減らすことにつながる。
まとめ
建設業のAI導入は、現場作業ではなく現場の前後にある事務作業から考える。
最初の候補は見積書の作成で、発生頻度が高く、過去の蓄積が使え、判断と作業を分けやすいという三つの条件が揃っている。
現場にいる人がスマートフォンから使えるか、元請けの書式に対応できるかが定着を左右する。
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